2015.8.15行動【報告】「戦後レジーム」の70年を問う 7・8月行動報告

敗戦七〇年の秋、安倍政権は安保法制を強行可決して、その戦争国家体制づくりを更に一段階進めた。同時にその歴史認識においては、植民地支配責任や侵略戦争への責任を限りなく無化し、日米同盟を基軸とする「未来志向」「積極的平和主義」をうたいあげる「安倍談話」を発表した。

安保法案をめぐる国会内外の攻防における安倍政権の対応にみられるように、「戦後レジーム」からの脱却を呼号する安倍政権は、戦後民主主義=平和主義を、暴力的に押しつぶしていく「ファッショ的」政権である。国会周辺に詰めかけた多くの人びとが、そのことに強い危機感をもち、声を上げ続けていたことは疑いない(「民主か独裁か」)。

だが、私たちは同時に、そこでいわれる「戦後レジーム」とはどのようなものであったかを問わないではいられない。たんに「戦後民主主義」の内実がどうだったかと言うだけではない。それ自体が天皇制国家の戦争責任を免罪し、日米安保体制を新たな「国体」とすることを構造化した体制であること、そして安倍の言う「脱却」とは、その体制を現在的に強化するために、「戦後」のなかに確かに含まれていた民主主義や平和主義的なものを破棄していくためのスローガンであることが、確認されなければならない。私たちは、今年の8・15をこういう問題意識にたって取り組むべく、一連の行動を行った。

今年は8・15当日を反「靖国」デモのみとし、講演集会を別におこなった。私たちが常に頭を悩ませているところの会場問題が大きいが、そのことを逆手にとって、講師の話をじっくり聞き、かつデモにも集中することができるとも考えた。

七月二六日には、水道橋の全水道会館で、田中利幸さんをお招きした講演集会。諸集会と重なる日程だったこともあり、参加者はやや少ない五六人。

主催者からの基調的な発言の後、講演。田中さんは、「敗戦七〇周年を迎えるにあたって〜戦争責任の本質問題を考える」として日本の戦争責任、天皇制の役割について、パワーポイントを使いながら講演した。原爆と空襲という無差別大量殺戮=人道に対する罪を犯した責任が問われることがなかったアメリカは、その後も繰り返し各地で多くの市民を殺傷してきた。日本政府が無条件にそれを支持し続けてきたことについて、それを許してきたわれわれの責任がある。日米合作の起源である敗戦時にさかのぼり、戦後を問い直していかなければならないなどと述べた。実行委からは天野恵一がこれに応答するかたちで発言し、講演の趣旨に賛意を示しながら、戦争を終わらせた天皇制の「聖断」という神話とアメリカの「原爆」投下という神話とが、合わせ鏡のように見合って始まった戦後があり、「国体護持」のために戦争を長引かせた天皇制国家には原爆投下を招いた「招爆責任」があるという視点を強調した。

講演に続き、「2015 平和の灯を!ヤスクニの闇へ キャンドル行動」、つくばの「戦時下の現在を考える講座」、安倍靖国参拝違憲訴訟の会・東京から、それぞれアピールをいただいた。

八月四日からは、田中利幸さんが代表をつとめた「8・6ヒロシマ平和のつどい2015」に参加。この集会は「検証:被爆・敗戦70年─日米戦争責任と安倍談話を問う」と題されて行われたもので、私たちも今年の8・15行動の一連の取り組みの中に、これへの合流を位置づけていたもの。実行委員会からも多くのメンバーが、広島市まちづくり市民交流プラザにおいて開催されたこの集会に参加した。三日間にわたり、八つの講演会とまとめ集会からなる、きわめて充実した講演と討論が行われた(講師は上野千鶴子・渡辺美奈・高島伸欣・市場淳子・天野恵一・安次富浩・中北龍太郎・武藤一羊)。また呉や岩国、原民喜の足跡をめぐるフィールドワークもあり、六日には原爆ドーム前のグラウンド・ゼロのつどい、中国電力本社前へのデモと脱原発座り込み行動に参加した。

そして八月一五日の反「靖国」デモ。二二〇名余りの参加者があり、デモ前の打ち合わせ会場である「スペースたんぽぽ」に入りきれない。出発前の集会では、戦時下の現在を考える講座、自衛隊・米軍参加の東京都・立川市総合防災訓練―九都県市防災訓練に反対する実行委員会、辺野古への基地建設を許さない実行委員会から、それぞれアピールを受けた。続いて、前日発表された「安倍談話」に対する批判を含めた「反『靖国』行動アピール」を全体で確認し、神保町から靖国神社の大鳥居を望む九段下交差点を通り、水道橋駅近くの小公園までのデモに出発した。今年は敗戦七〇年という節目であるからか、警備も例年にない右翼シフトを敷いて、街宣右翼を大幅にシャットアウトしたために、デモ隊への突入や宣伝カーへの攻撃、横断幕やプラカードの強奪といった事態は、昨年までに比べればきわめて軽微にすんだ。しかし、機動隊のデモへの圧縮などの妨害、公安警察による違法なビデオ撮影は、これまで同様、あるいはそれ以上のものがあった。他方、在特会など「行動する保守」の連中は、かなり参加者を減じたように見えた。

特筆すべきは、九段の交差点近くで、「アベ政治を許さない」というプラカードを掲げた女性が、私たちのデモ隊に声援を送っている姿が見えたことである。ほかの場所でも、同様の人がいたという。当日、千鳥ヶ淵でおこなわれた集会の参加者かもしれない。しかし、右翼と警官に囲まれながら、堂々とアピールするその姿はすばらしかった。

7・8月行動は終了したが、参加者の多くが、8・15を前後する国会周辺の安保法制反対行動に通い詰める日々に忙殺されたはずである。戦争国家が必然的に招き寄せる戦争の死者を、戦争目的を賛美するために国家が利用する「慰霊・追悼」という問題は、ますますリアルなものとなってきている。今後も続くであろう戦争法の実質化、戦争国家を拒否する闘いに参加する中で、こうした課題を訴え続けていきたい。

最後に、きわめて残念なことだが、8・15集会に潜入した右翼によって集会の模様が盗撮され、youtubeに動画がアップされるという事態がおきてしまった。これについて現在、弁護士とも相談しながらyoutubeへの動画取り下げ要請などを続けているところである。これについては、今後、何らかのかたちで報告したい。

(北野誉)