2017.8.15行動【よびかけ】「代替わり」過程で天皇制と戦争を問う 8.15反「靖国」行動へのよびかけ

6月9日、天皇の「退位特例法」が参院本会議で成立させられた。これによって、来年末の天皇退位、2019年初頭ともいわれる天皇「代替わり」のスケジュールが正式に日程に上ることになった。

法成立にあたって安倍首相が、「衆参両院の議長、副議長に御尽力を頂き、また各会派の皆様のご協力を頂き、静謐な環境の中で速やかに成立させていただいた」と談話で誇ったように、天皇問題に関しては、仮に議論があったとしても、そのことが公然と交わされてはならず、あらかじめ談合して一致させるという「翼賛国会」としかいいようのない状況が現出したのだ。

この法律の第一条に、これまでの天皇明仁の「公務」が初めて明記され、「国民は、御高齢に至るまでこれらの御活動に精励されている天皇陛下を深く敬愛し、この天皇陛下のお気持ちを理解し、これに共感していること」と明言している。天皇と「国民」とは、憲法上の法的な関係であるよりも前に、「情」において結びついているという、「君民一致」の「国柄」であることを宣言したに等しい。

「退位特例法」国会上程にあたって私たちは、「8.15反『靖国』行動実行委員会(準備会)」として、国会議員への申し入れ、明仁に対する抗議文を共同声明として提出する行動などに取り組んだ。あらためて今年の8.15反「靖国」行動への参加・賛同のよびかけを発するにあたり、われわれは現実的に開始された「天皇代替わり」過程に対して、具体的な反対の行動を作り出していくこと、同時に、そのための共同の作業を、ともにすすめていくことをよびかける。

いうまでもなく天皇「代替わり」というのは、前天皇の「総括」と、それをふまえた新天皇の「展望」のキャンペーンの時間となる。

天皇裕仁の死=「Xデー」による「代替わり」においては、新天皇明仁の「護憲・平和」「皇室外交」への期待がマスコミを覆った。「軍部に反対していた平和主義者」として描かれていたとはいっても、裕仁と「大元帥」のイメージは分かちがたく、天皇制の戦争責任を糾弾する声は、この時期大きく上った。そして「Xデー」が社会的にもたらした「自粛」の重圧と閉塞感が、天皇制のもつ同調圧力と暴力性を露出させ、全国的な反天皇制闘争の力の源泉ともなった。

しかし、新天皇明仁がなしたことは、いわばそうした天皇制のありかたを、イメージの上で「脱色」していくことであった。戦後民主主義や憲法への肯定的な言及、東南アジアや中国をはじめとするかつての戦争加害国への訪問、沖縄を含む国内外の「戦地」への「慰霊」の旅など、その「親しみやすさ」が演出されたふるまいとあいまって、天皇制イメージを塗り替える役割を果していったといえる。それはいわば、「象徴天皇制の完成」であると言ってもよい。

その結果として、いわゆる「リベラル派知識人」を含む、明仁天皇賛美の大合唱がある。安倍政権が強行している国家主義的・排外主義的な政治を単純な「復古主義」「戦前回帰」とみなし、戦後的価値に適合的な明仁天皇の「権威」をも使いながらこれと闘おうという主張は少なくない。「立憲主義」を掲げて安倍政治に対する反対運動を大きく作り出した潮流のなかに、天皇自身による憲法破壊にほかならない「退位特例法」を、おなじ立憲主義の原理に立って批判する声がほとんどみられないことには、このような「政治判断」があるのではないかという危惧さえ私たちは抱いている。

しかし、天皇と政治をめぐる関係は、実際にはどのように存在しているのか。とりわけ、日本の「戦争国家化」において、その国家の「象徴」たる天皇制はどのような役割を果し、また果すことが期待されているのか。現在的な、明仁天皇制に対するわれわれの側からの「総括」を果していかなければならない。 安倍首相は、「東京オリンピック」の年である2020年の改憲実現を明確に主張し、年内に改憲案を国会提出すると明言した。具体的な改憲項目などについては紆余曲折があるだろうが、2012年の自民党の改憲草案においては、「天皇が元首である」ととともに、前文で日本は「天皇を戴く国家」であると明記していることを見落としてはならない。また、「代替わり」前年にあたる2018年は、「明治150年」にあたる。政府はすでに記念行事の準備をすすめ、右派勢力は、現在「文化の日」である11月3日を「明治の日」としようという運動を強化している。これもまた、向こう側からの日本の近代の総括となるだろう。

われわれは、こうしたことのすべてが、天皇「代替わり」過程と重なり合っていくだろうことを問題としていく。近代天皇制国家において、そもそも天皇制と戦争との関係はいかなるものとしてあり続け、そしてそれがどのように変容し、戦後社会を規定してきたのかといった問題を考えていかなければならない。8.15反「靖国」行動は、国家による「慰霊・追悼」を撃ち、天皇制の植民地支配、戦争・戦後責任を批判し抜く行動として取り組まれてきた。現在の戦争国家の進展によって、「新たな戦争の死者」はますます現実化している。天皇のための死者を「英霊」として顕彰し、国家のための死を宣揚する靖国神社はいらない。そして天皇出席の「全国戦没者追悼式」もまた、国家による「慰霊・追悼」自体が、戦争準備の一環をなしている。8.15当日のデモと、8.11講演集会に参加を。そして、実行委員会への多くの参加・賛同、協力を訴える。

「代替わり」過程で天皇制と戦争を問う8.15反「靖国」行動

【呼びかけ団体】アジア連帯講座/研究所テオリア/戦時下の現在を考える講座/立川自衛隊監視テント村/天皇制いらないデモ実行委員会/反安保実行委員会/反天皇制運動連絡会/「日の丸・君が代」強制に反対の意思表示の会/靖国・天皇制問題情報センター/連帯社/労働運動活動者評議会